『その男、凶暴につき』
 イメクラにやってきた拓弥。痴漢電車コースを選んだ。電車の中にいる設定で、客がイメクラ嬢、シオリンの体を触りまくるというプレイ。だが、拓弥はカッターナイフを取り出し、イメクラ嬢に渡す。これで触られて嫌だと思ったら切りつけてくれという。

 イメクラには必ず痴漢コースなるものがあるんです。あるからには一度、演劇にしてみなければ、と思ったのですが、これもまた相当、苦労することになります。もともとイメクラで行われていることは演劇に近いんです。ある取り決めを二人で行い、その役割に応じてプレイしていく。ですから、その演劇をやっている状況をさらに演劇化するとなると、どんどんコントに近くなっていくんです。これには困り果てたのですが、コント的な笑いが絶対に発生しない状況を作ればいいのではないか、というところに考えが及び、イメクラ嬢と客の間に「カッターナイフ」という緊張感を生み出す物を置いてみたのです。その小道具の登場により、「コントもどき」から「非常にいい演劇の短編」に生まれ変わったのです。

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